
私もお母さんちで楽しくやってるよ
私が十二歳くらいのときの話。
両親は離婚していて、私は父と母の家を行ったりきたりしていた。
クリスマスに母に会いたくなり、サプライズで父には「母に連絡した」と嘘ついて、連絡しないで母家に行った。
すると、母の彼氏がきていた。
母は笑顔でむかえてくれたんだけど、母の彼氏がかなり不機嫌そうな顔をしていた。
子供なりに『やばい』と思って家を出た。
で、公衆電話で父に電話していたんだけど、「今同僚が家にきている」と父。
楽しそうだったし、女性の声がしたような気がして(結局気のせいだったんだけど)
『帰りたい』と言い出せなくなって、
「私もお母さんちで楽しくやってるよ」
と嘘をついた。
で、どうしようもなくて、寒いしお腹すいたしで、結局母家にUターンした。
インターホン鳴らすと母が慌てて出てきて、
「お父さんのところに帰ったんじゃないの?」
私が「やっぱりお母さんのところがいい」と言うと、いきなり母の彼氏がやってきて、玄関に連れ込まれ殴られた。
母は必死で止めてくれて、私も逃げようとしたけど、腕をひっぱられて二発くらい殴られ、額から血が出た。
大人に殴られたなんて始めてだし、そいつが
「お前なんかしんじまえftgyふじこlp」
と叫んでいるのが、どう見てもひどく酔っぱらっていると思って、必死で隙をついて逃げた。
母は追いかけてきてくれなかったし、頭ががんがん痛くて泣きながら歩いた。
とりあえず、父に電話をかけようと公衆電話のあたりに行ったら、なんと父が走ってくる!
父は私が血を流しているのを見てびっくり仰天。
ハンカチで額を押さえてもらいながら、泣きながら事情を説明すると、父は怒り狂って母の家に行こうとしたんだけど、一人になるのが嫌で必死で止めた。
父はまだ怒っていたけど家に帰り、手当をしてもらった。
クリスマスどころじゃなかった。
父がなぜあそこにいたかというと、
「電話から車の音が聞こえた気がした。外にいるのにどうして母家にいると言ったんだろうと考えると、気になって母家に行こうとしているところだった」
と。
それから父は母と頻繁に連絡を取り合い、男は警察に。
どういう判決になったか知らないけど、母は彼氏と別れた。
私は母が好きだったんだけど、もう怖くなってしまって、あまり母の家を訪れることはなくなった。
母のことは今となってはあまり好きじゃないし、私より彼氏を選んでいたんだなと思う。
でも、寒い中走ってきてくれた父の姿を思い出すと今でもうれしくなる。
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