
本当に、ただ『生きる』だけです
22歳になるオスの老犬が来ました。
彼はほとんど寝たきりで、飼い主が寝返りを打たせているので、床ずれがいくつも出来ていました。
意識はしっかりしてるのですが、ご飯も飼い主が食べさせている状態でした。
獣医師の診断では
「体は動かなくなっているけれど心臓が丈夫なのでしばらくは生きられます。けれど、本当に、ただ『生きる』だけです。」
そんなようなことを言っていたと思います。
そのあとはどのようなやりとりがあったのかはよくわかりませんでしたが、おそらく安楽死を検討されたのでしょう。
飼い主さんはかなり悩んでいたようです。
一日たった日の終業後、飼い主さんは老犬を連れてやって来ました。
心電図をつなぎ、静脈に薬剤を注入し、静かに老犬は永遠の眠りにつきました。
その日、外は小雨が降っていました。
飼い主さんは獣医師に
「タクシーをお呼びしましょうか」
と言われたのを静かに断り、
22年間一緒に暮らした家族の亡骸をバスタオルに包んで 、小雨のなかを歩いて帰っていきました。
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