それアンタと飲むのを楽しみにしとったんやで

父親のこと
俺は親父が好きじゃなかった。

お袋とだったら何でも話せるのに、親父と本音で話したことなんてなかった。

親父は俺が18のとき死んだ。

心臓が急に止まったらしく、何の処置もできないまま死んだ。

その時は涙は出なかった。

ただ、泣きじゃくるお袋を可哀想だとは思った。

俺が21のとき、いい加減親父の部屋を

片付けようってなって家族で片付けていた。

俺はワインを見つけた。

俺が中学の修学旅行で土産に買ってきたものだ。

お袋は言った。

―お父さんな、それアンタと飲むのを楽しみにしとったんやで。

なぜか涙が出てきた。

俺は親父の墓前でそれを飲んだ。

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