
お父さんは、君とずっと手をつないで歩いていたかったよ
甘えん坊の君は、三年生になってもお父さんと手をつないで歩くのが大好きだったね。
ポケットに突っ込んだお父さんの手を引っ張り出し、手をつないで満足そうな顔をする君を見て
『やれやれ』
と思いながらも嬉しかったよ。
そう、あの日も手をつないでいたら、きっと君は事故になんか遭わなかったんだろう。
病院で最後に握った君の手は、まるで氷の様に冷たくて、もうお父さんの手を握ってはくれなかった。
『もしかしたら握り返してくれるんじゃないか』
そう思えて、何時までもずっと君の手を離す事ができなかった。
いつだったか、
「もう小さい子じゃないんだから」
と振りほどこうとしたお父さんの手を、君は離すまいと力いっぱい握り締めて
「いつか止めるけど、今はまだダメ」
って言いながら笑ったね。
君が言った「いつか」が、こんなに突然やって来るなんて思わなかった。
お父さんは、君とずっと手をつないで歩いていたかったよ。
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