手を真っ赤にして一生懸命こねていた

手を真っ赤にして一生懸命こねていた

3歳の頃母親が死んだ。

親父は葬式の4ヵ月後に全然知らん女と再婚。

その上死んだ母親の係累との繋がりを自分から断ち切ってしまった。

漏れは色んな事実を受け止める、いや理解することさえ出来ず、本能的に突然目の前から消えた母親の代わりに自分を守ってくれる存在を捜し求めていた。

夕方、近所の子どもたちと遊んでると、それぞれの子の母親が 「ごはんだよ~!」と呼びにくる。

気が付いたら薄暗い広場に自分ひとり残ってた。

そんな毎日だったが別に「さびしい」とか「悲しい」 とか、そんな感情は湧かなかった。

ただ自然に、「そろそろ俺も帰ろう。」そんな感じだった。

3歳の坊主の心理なんてそんなもの。

そんな漏れを不憫に思って面倒見てくれたのが死んだ母親の母親、つまり婆ちゃん。

家が比較的近いこともあってたまに一人で出向いてた。

行くと婆ちゃんが必ず漏れに作ってくれたのが

あんこの 「だんご」。

それもだんごの原料の「米の粉」やあんこは自分で挽いた本格的なやつ。

米の粉は蕎麦をこねる「木鉢」に入れ、

沸騰した熱湯を注いで熱いうちに素手でよくこねないと美味くならないんだな。

婆ちゃんはひたすら手を真っ赤にして一生懸命こねていた。

あんこがたっぷり乗った、暖かい湯気の出ているだんごをほうばる漏れを眺める婆ちゃんの表情は笑うでもなし、泣くでもな し、複雑な表情だった。

そのときは通り一遍の「うまかった。」という印象しか残らなかった。

あれから数十年、漏れも人の親になった。

ふとしたことであの時を思い出した。

「そうだ。子供にだんごを作ってあげよう。」

婆ちゃんのしぐさを思い出しながらやってみたが、どうしても米の粉をこねる、という工程ができなかった。

熱湯を注いだ米の粉に熱くて手が入れられないんだな。

仕方なくある程度冷めてからやったが、味も素っ気もない、粉っぽいだんごになってしまい、結局あのときの味は再現できなかった。

漏れは鈍いヤツだったな。今頃になって婆ちゃんの愛情の深さに気が付いたよ。

婆ちゃん、あのときのだんごまた作ってくれよ・・・・

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