延命措置は大丈夫です

延命措置は大丈夫です

19歳の秋に母は亡くなった。

物心ついた頃から父親は居なく、女手一つで育ててくれた母だった。

環境がそうだったのか、自分の道すら探してる時期は社会に反した生活をしていた。

ある日の昼、一週間くらい電源切ってる携帯に電源を入れた…

その瞬間、コールが鳴った。

画面を見ると、弟からの着信だった。

出るか迷ってたけど胸騒ぎに近いものを感じ、電話に出てしまった。

「お母ちゃん病院に運ばれた!すぐに病院に来い!」

俺は、この電話を受けても楽観的に感じていた…

母は糖尿病の合併症で、腎臓透析など病院に入院したりと運ばれる事が沢山あったからだ。

俺は入院なんだと勝手に思い込み、入院病棟に行き電話をした。

「何階に居るの?」

すると、怒鳴り声に聞こえるような焦ってる声で

「救命センターだ!今意識不明で、どうなるか分からないんだ!冗談言ってないで早く来いよ!」

俺は一瞬、頭が真っ白になりつつ、何とかなるだろとまだ楽観的に感じていた。

救命センターに着くと、治療室の前に慌ただしく駆けまわるナース達が居た。

それを見てると思い出す事があった。

ある日の夜中、家にそっと帰ると待ってましたの如くリビングで1人コーヒーを飲んでる母が居た。

母は俺に

「ご飯食べたの?」

俺は素っ気なく

「食ってない」

すると母は、鍋焼きうどんを作ってくれた。

テレビをつけて鍋焼きうどんを食べ、母と2人の空間が続き、いきなりボソッと言ってきた。

「もしもの事があったら、頼みたい事がある…」

俺は無視してた。

「もしも生死を選択する事があった場合、延命措置をしてほしくない!」

俺は腹が立った。。

「なんで俺に言うんだよ!もしもっていつだ!?」

こんな話を思い出してしまった…

すると、兄貴がおばあちゃんを連れて救命センターに着いた。

兄貴は慌ただしく、兄貴の嫁や叔父さんに電話していた。

おばあちゃんは何も喋らず、下を向き涙を浮かべていた。

するとドクターが扉を開き、ゆっくりと俺達に言う。

「出来る事は全てやり尽くしました…大変言いにくいのですが…これからは延命措置になります…」

おばあちゃんの目が開き

「どう言う事なんですか!?」

俺には分かっていた…

少しでも生き永らえさせるか、殺すか…

おばあちゃんはずっと質問してた

「助からないんですか!?どーしたら良いんですか!?」

俺達は沈黙していた…

おばあちゃんは

「可能性があるのなら延命を…」

と言う途中に俺が、口を挟んだ。

「延命措置は大丈夫です!」

弟が俺を殴った。兄貴は

「ふざけるな!」

と怒鳴った。おばあちゃんは泣き崩れた。

俺は大声で

「お母ちゃんが言ったんだ…。

延命措置してほしくないって…。

死ぬ間際に色んな所に管を繋がれて逝くのが嫌だって。

その時はしょうがないって。

ただ延命されて生きてるなら、楽に逝かせてって…。」

誰も何も言わなかった…

いや…言えなかった。

俺は続けて言った。

[延命措置は、大丈夫です!」

俺が母を殺した日になった…

それから通夜の日に、家で仮眠をしていた。

夢なのか現実なのか

鮮明に覚えてるが、母が棺桶から出て来て俺に言うんだ。

「カバン!私のカバンは?」

俺はカバンを取って

「ここにあるよ!」

って言うと少し微笑んで、また棺桶に戻っていった。

俺は眠気からなのか、ボーッとしながらカバンの中身を出していた。

すると手帳を見つけて、何気なく開いた所に

『子供達へ』

と書いてる遺書みたいなのがあった。

俺はそれを見るなり、通夜で人がいっぱい来てるのに人目を気にせず大声で泣いていた。

それぞれ兄弟に宛てた遺書だった。

俺の所は


子供達へ

葵ちゃんとこれから一緒に暮らして行くのならしっかりしなくちゃね

頑張らないとダメな時に、頑張りきれない所あるからしっかりして

幸せにしてあげるんだよ


これを見る半年前に別れた彼女との事を書いていた。

これを見てるとき、俺は悔しくなり腹が立ち母が愛おしくなった。

もうどうする事も出来ないけど、最後にあの鍋焼きうどんをもう一度食べたい…

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