クッキー、ごめんね【犬の話】

クッキー、ごめんね【犬の話】

あれは中学三年くらいだったか

『クッキー』

そうゆう名前の子犬が、家に来た。

とても犬が飼えるような家でもないし、金もない。

俺の実家はペット禁止のボロアパート。

母の友達が『子犬が産まれたから』と、母が子犬を借りて来てくれた。

俺は犬がすごい好きで、小さい頃から犬との生活が夢だった。

もちろん家で飼う事ができないから、隠れて二、三日借りて返していた。

散歩に行くと、小さなクッキーがチョコチョコと歩き、とても可愛く大好きになった

ある日、また母がクッキーを借りて来た。

クッキーの腕にギブスみたいな物がついていた。

母が

「自転車のカゴから落っこちちゃって、ごめんね。」

と、泣きながらクッキーと俺に謝っていた。

片親で、女手一つで俺を育ててくれた母。

いつも堂々として、泣き顔など見た事なかったので、戸惑いながら

「クッキーも次からはカゴから飛び出さないよ、なっ!クッキー。」

と話しを流した。

そんな風に可愛いクッキーと何度も散歩を重ねているうちに、とうとう住人にもばれ大家から苦情がきた。

それ以来、クッキーを借りて家に連れて来る事ができなくなった。

飼い主の家までは自転車で一時間。

母は仕事を夜遅くまで、俺は部活でクタクタになり、休みもない。

なかなかクッキーに会いに行けなかった。

前は部活で疲れても、クッキーとの散歩で癒されていた。

クッキーに会えなくなり、何ヶ月経っただろうか?

ある日家に帰ると、大きな犬が玄関の前に。

俺を見るなり飛び付いて来た。

かなり、ビビった。

クッキー?あの小さかったクッキー?

そう気付き、急いで部屋に入れた。

一年位見ないうちに、こんなに大きくなるなんて。

さすが、柴犬。

「クッキーだれにも見られてないか?見られたら追い出されちまうよ。でもありがとう、すっげー嬉しいよ。」

など、ずっとじゃれ合っていた。

『ガチャ』

母が帰って来た。

「クッキーっ!」

見るなり驚いていたが、抱き着いていた。

母に、訳を話すと

「きっと逃げちゃったんだね、それにしても自転車で一時間もかかるのに、しかもカゴに乗ってしか来た事ないのに。」

とぶったまげていた。

すぐに飼い主に電話していた。

俺は気にせず久々のクッキーとじゃれていた。

電話から戻って来た母は、さっきとは明らかに違う暗い顔。

「クッキー捨てられちゃった…」

飼い主さん家は、五、六匹産まれた子犬が皆大きくなったが、仕事の方も駄目になり、飼うのが苦しくなった。

子犬なら欲しがる人はいるが、1.5メートル程の大きな犬は貰い手が見つからないと。

捨ててしまったとのこと…

俺も母も唖然とし、どうするか考える事も難しかった。

ペット飼える家を借りれるわけもない。

とにかく早く飼ってくれる人を探さなきゃ。

時間は待ってはくれず。

二日が過ぎた頃、大家からまたもや苦情が来た。

母が訳を話し免れたが、大家から

「自分達じゃ辛いでしょうから、私が保健所に連れて行きましょう。」

と言ったが、母は「自分で」と言い拒否。

「じゃあ、明日の夕方までにお願いします、じゃなければ呼んで連れてってもらいます。こっちも周りの住人から苦情が、」

と言い帰って行った

クッキーは、ここにいても生きて行けない

クッキーを………捨てよう。

そう言ってクッキーをつれ、家を出ていった。

クッキーはしっぽ振って散歩だと思っている。

もう、会えない。

僕は一人で、布団に入り泣いた。

夜中になっても、母は戻って来ない

俺は気付かないうちに眠っていた。

そして、目が覚めると母がいた。

話しを聞くと、

自転車で捨てる場所を探しまわったらしい。

でも捨てる場所なんかあるわけないと、明け方まで途方にくれていたみたいだ。

結局、賭けで小学校と従業員の多そうな工場の近くに

『お願いします、飼って下さい』

と書き置いて来たそうだ。

話しを終えると、母は仕事にでかけた。

僕も学校へ。

その日の夕方、大家さんが来た。

母はまだ帰って来てなく、俺がでた。

成り行きを話し、納得してもらった。

すると大家さんが

「ちゃんと責任持てるように、ちゃんと飼えるようになったら飼いなさい、

希望を持たせちゃいけないと思って言わなかったけど、私もクッキーちゃんを飼ってくれる人を探したけど見つからなかった。

ペット可の物件を貸してる人などに聞いても駄目だったよ。

ペットを飼うのも難しい。」

と言って帰って行った

今なら痛いほどわかる。

小学生か工場の方が拾ってくれるのを信じた。

いや、罪から少しでも逃げたかっただけだろう。

何の罪のないクッキー。

夜中家を出て、『クッキーを置いて来た』と聞いた場所に一人で来た。

当然、もういるわけもないが、昨日は確かにそこに取り残されたクッキーがいたのだろう。

俺は何度も何度も

「クッキーごめんね」

何度も何度も

何度も何度も

つぶやいた…

さようなら

クッキーありがと、幸せをくれて。

クッキーありがと。

自分の愚かさに気付けた。

クッキー

クッキー

今度、もしお互い生まれ変わったら、今度こそ一生一緒にいるから。

お願いします。

お願いだから、また俺の元に来て下さい。

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