あの酒は親父と一緒に呑みたいから

あの酒は親父と一緒に呑みたいから

6年前に亡くなった親父。

決して良い父親じゃなかった。

いやな事があると酒を飲んでは暴れ、母親にあたってばかりいた親父。

思春期の頃から大っ嫌いだった。

でもそれが、自分も大人になり、いつの間にか小さくなった親父の背中を見た時、ふと親父も辛かったのかなと思えた。

寒くなり始めた頃、次の正月には一緒に酒を呑もうと思って話した。めっきり酒に弱くなっていた親父。

一度も一緒に呑んだ事がなかったから。

なのに、、、何でその1週間後に逝くんだよ。

何で急に逝くんだよ。

建てた家も産まれたばかりの孫も、まだ見てもらってなかったじゃないか…。

安置所で顔を見た時は信じられなかった。

棺の中で眠る顔を見た時、幼い頃に遊んで貰った記憶ばかりが甦ってきた。

涙が止まらなかった。

嗚咽が出るのを堪えられなかった。

母親に聞いたよ。

渡した孫の写真を毎日見ては、何度も俺に似てるって嬉しそうに話してたらしいな。

孫を抱いてもらえなくてごめんな。

酒を注いでやれなくてごめんな。

親不孝ばかりしてごめんな。

あと何年後、いや何十年後かもしれないけど、俺がそっちに行ったら一緒に呑んでくれるか?

その時まで、そっちでも呑みすぎてまた体壊したりするなよ。

親父が好きで呑んでた銘柄は、今でも呑んでないよ。

あの酒は親父と一緒に呑みたいから。

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